製造現場の『言えない空気』を変える
心理的安全性の正しい理解と管理職の第一歩
製造現場では、安全・品質・定着率が「指示されたことを適切に理解できているか」によって左右される側面が強く、コミュニケーションの質はとても重要であると言えます。
では”質の高いコミュニケーション”とはどのように実現できるのでしょうか?
製造現場でよくあるコミュニケーション課題
このような問題を抱えた経験はありませんか?
・ルールは周知しているはずなのに、ヒヤリハットの報告が後から上がってくる。
・手順について説明と指導をしたにもかかわらず、作業手順を正しく理解できてい
なかったためにミスが発生する。
・朝礼や個別の説明・指導で繰り返し伝えても、現場の動きが変わらない。
これらの問題はどこに原因があるのでしょうか?
単に指示の回数が足りないのか。
それともルールや説明書の書き方や表現が良くないのか。
それとも個々人の能力不足によるものなのか。
これらは問題が表面化したときに最初に疑いやすい項目ですが、残念ながら根本的な原因ではありません。
原因は、従業員の「わからない」を本当の意味で解消できていないことであり、「わからない」と言えない空気が生まれていることにあるのです。
「わからない」と言えない空気がある現場では、小さなミスやヒヤリハットは「叱責されるかもしれないから言わない方がいいだろう」と判断されて隠されることが多く、それによって安全や品質の低下が起き、最悪の場合は重大事故につながることもあります。
また、「わからない」が言えないことで仕事の習熟度を上げられず、従業員のやる気が低下することを背景として人材定着率の低下につながることもあります。
現場コミュニケーション改善の具体的な方法をまとめた資料はこちら
なぜ現場で”言えない空気”が生まれるのか
「わからない」と言えない空気が生まれる背景には、心理的安全性──つまり『わからない』と言える空気──が醸成できていないことがあります。
特に製造現場では、従業員の高齢化に伴う世代間ギャップや人材の多国籍化といった人員構成の変化によって、近年では心理的安全性の高い職場環境を作るハードルは高くなっていることも事実です。
たとえば技能継承の場面では、ベテランは「背中を見て学ぶべき」と考える一方、若手は「手順を言葉で明確にしてほしい」と感じることがあります。こうした捉え方の差が、コミュニケーションのすれ違いを生み、「言いにくい空気」につながることがあります。経済産業省の調査でも、「技能継承がうまくいっていない等企業」2,581社のうち、37.8%が「指導者と指導を受ける側のコミュニケーション不足」を一因として挙げています。(※)
また、多国籍な人材がいる現場では、言語の壁に加えて、文化的な背景から『わからない』と言い出しにくかったり、叱責を恐れて沈黙を選んでしまったりすることで、確認できないままミスにつながるケースも多くあります。
こうした環境では、管理職が意識してコミュニケーションを設計することが、心理的安全性を高めるうえで重要な一手になります。
心理的安全性とは何か──現場管理職が知っておくべき3つのポイント
ではこうした構造に対して、現場の管理職として何を意識すればいいのか。
3つのポイントで整理します。
① 心理的安全性は「仲良しな職場」ではない
心理的安全性が高い職場というと、「仲良しな職場」「ぬるい職場」と誤解されがちです。しかし、本質はそうではありません。
この概念を提唱した組織行動学者であるエイミー・エドモンドソンの定義では、「チームの中で対人リスクを取っても安全だという共通認識」を指します。それを製造現場に置き換えると、「ちょっといいですか」と言えること、「実はまだ理解しきれていません」と言える環境であること。
つまり、きちんと言うべきことを言える職場であることが心理的安全性が高い職場なのです。
② 現場で必要な4つの関係性条件
心理的安全性が高い職場とは、以下に挙げる4つの関係性条件を高いレベルで満たしていると考えられます。
-
条件①「わからない」と言える
-
条件②失敗を共有しても責められない
-
条件③上司が聞く側に回れる
-
条件④情報が特定の人で止まらない
これら4つの条件は即座につくることは難しく、職場内での日常的なコミュニケーションの中で積み重ねられ、育まれていくものです。
意識できるものから順に、少しずつでも実践をしていくことが重要です。
③ 明日から実践できる「3つの問い」
現場で必要な4つの関係性条件を構築していくために、大きな改革をいきなり行うのは難しいと思います。
現場を管理する管理職が、「この現場には心理的安全性が保たれているだろうか?」という問いを持つことが、現場改善の第一歩になるはずです。
まずは朝礼や終礼で、以下の3つを自分自身に問いかけてみてください。
-
今週、誰かの小さな違和感を拾えましたか?
-
自分が「相談する側」に回れましたか?
-
先週の共有された学びは今週の行動に反映されましたか?
まとめ
こうした実践の積み重ねが、現場の『言える空気』をつくっていきます。
より詳しい事例と実装方法は、ホワイトペーパー「三菱電機が実践する現場の心理的安全性の高め方」で詳しく解説しています。
より実践的な内容はぜひそちらをご覧ください。