「外国人労働者が本当に理解できているのか分からない」
このような悩みを抱えた経験はありませんか?
現場でのコミュニケーションに苦慮する声は絶えませんが、この課題の根本にあるのは単なる「言葉の壁」だけではありません。「どのような立場と制約を持った人が現場に立っているか」という、建設業特有のリスク構造に本質的な原因が存在します。
建設業界における人手不足の深刻化に伴い、現場での外国人材への依存度は年々高まっています。データを見ると、建設業における外国人材の雇用依存度は86.1%*に達しており、全産業平均の69.0%*を大きく上回る水準です。
しかし、注目すべきはその人材の内訳です。建設業で働く外国人労働者のうち、実に52.1%*が「技能実習生」で占められています。
ここで重要になるのが日本語能力の問題です。技能実習生の70.8%*は日本語会話力が「日常会話程度以下」という調査結果が出ています。
つまり建設現場は、全産業平均と比べても「経験および日本語能力が十分ではない人材」に強く依存していることが分かります。
*出典:厚生労働省「外国人雇用雇用実態調査」(令和7年8月29日)
経験や日本語能力が十分ではない技能実習生が多く働く中で、なぜ建設現場では特にリスクが高まりやすいのでしょうか。そこには建設業ならではの3つのリスク構造が関係しています。
①雇用のねじれ構造
現場全体の安全を統括するのは「元請」ですが、外国人材を直接雇用しているのは「協力会社(下請)」であることが一般的です。この安全統括者と雇用主が異なる乖離が、指示や管理の難しさを生んでいます。
②「都度指示」の必要性
工場などの固定された生産ラインとは異なり、建設現場は天候や工程によって日々作業内容が変化します。そのため、事前のマニュアルや一度の安全教育だけでは対応しきれず、毎日の「都度指示」が欠かせません。
③危険源の多様性
作業場所や工程ごとに危険の質が変わる点も大きな特徴です。非定型な作業や突発的なトラブルが発生した際、とっさの指示が伝わらないと重大な事故に直結する懸念があります。
こうした構造的な要因が積み重なった結果は、労働災害のデータにも明確に表れています。
令和6年のデータによると、建設業における外国人労働者の死傷者数は1,165人*に上り、製造業に次いで2番目に多い状況となっています。さらに、死亡者数に限ると全業種の中で最も多いという厳しい現実があります。特に作業計画で示された立入禁止エリアへの進入など、指示の解釈違いに起因する墜落・転落事故が目立ちます。
事故を未然に防ぐため、現場によっては「外国籍作業員1人に対して経験豊富な日本人1人のペアを組ませる」といった独自の安全ルールを設けるケースもあります。しかし、この取り組みは安全性を高める一方で、配置できる人数が制限されて協力会社の人繰りを圧迫するなど、安全管理とリソース確保のジレンマを引き起こす側面もあります。
個々の現場による個別の工夫や精神論だけでは、この構造的リスクを乗り越えるには限界があるのが現状です。
*出典:厚生労働省「令和6年 労働災害発生状況について」
建設現場における安全リスクは、コミュニケーションの障害だけではなく「技能実習生への依存度の高さ」と「建設業特有の現場構造」が複雑に絡み合うことで生じる問題です。
では、この構造的リスクに対して、具体的にどのように向き合い解決していけばよいのでしょうか。
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